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本当は友達と三人でドライブに行く予定だったが、企画したやつが急に入院することになり、頓挫した。行くはずだったもう一人と、知らない駅前のでかいスーパーで待ち合わせして、ぶらぶらとお見舞いに行く。身内以外のお見舞いが初めてで、何を持っていけばいいか分からず戸惑ったが、ポケモンが好きだったのを思い出して、行きしなにポケセンに寄りフシギバナのぬいぐるみを買った、並んでる中で一番可愛かったので。もう一人に何を持ってきたか聞いたら遊戯王のパックを紙袋に入れてきていた。相手は25の大男である。

歩道橋の上を話しながらぷらぷらと行く。中心街から一キロほどしか離れていないその町は人通りが少なく、海風でしゃんと寒くて、光が充満して明るい。なんか正月みたいだとしきりに言った。海の近くの病院に辿り着き、警備室に面会申し込みをしようとしたら、予約してないとだめだと言われ、応対していた警備員さんの後ろにいた別の人から、そもそも家族以外はだめですよーと言われ、断られた。そんな話は全然聞いてない。入院している張本人に連絡を入れると、やっぱり全然聞いてないということだった。二時間かけて来た静かな病院の前で、どうしようもなくて腹を抱え笑う。

LINE越しに立ち上がる申し訳なさそうな表情で、せめて一階に降りられないか聞いてみるというから、少し待った。手術は無事に終わり、数日もすれば退院のはずで、今度のお見舞いも結構気軽に来てしまったが、いざ会えないとなると少し心細い気がして、もう帰ろ!焼肉行こ!とやけになった。そのうちにまたLINEが来て、やっぱり下に降りるのも難しいということだった。

来た道を引き返していたところ、病院近くの温泉施設の前まで向かえ、と連絡が入る。こえーよーと話しながら、海に面した道を通ってぐるりと病院の向こうへ周る。散歩しているポメラニアンと互いを気にしながらすれ違った。施設の前に着いたと言えば、今度は日陰から出て、旗の下に立て、と。言うとおりにして、病室のある5階を見上げると、あー見える見える、人影が。かろうじて誰かいるのがわかるくらいで顔は全く見えないが、手を振ると律儀に振り返してくる。あんまり面白くて大きな声が出た。こっちが元気づけに行ったはずなのに、この人のこういう気遣いはいつもこちらを明るい気持ちにしてくれて、ありがたい。明るい気持ちで駅まで戻って、美術館に行き、焼肉に行った。この日のことを丸ごとそのまま、なるべく長く覚えていたい。