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二か月振りに使うリュックサックを携えて図書館に向かう。サイドポケットをまさぐったら石が出て来た。三角錐を上から押しつぶしたような形で、ちょうど拳に収まるよいサイズである。触るとすべすべして少し温い。三角錐の一面が内側にへこんでいて、手のひらの肉を柔らかく受け止める。

今年の二月に友人と天橋立までドライブをして、その時に拾ったものだったと思う。あの日は朝から不穏な曇り空だったのに、目的地に着いたとたんカーンと晴れた。立っている看板やすれ違うカップルや、ひょこひょこ跳ねる鶺鴒なんかを冷やかしながら、松並木を四人並んで歩いた。私はどうにも気恥しくなって、時々わざとスキップをして、三メートルくらい先を歩いた。天橋立の後に有馬温泉に向かい、一枚くらい写真を撮ろうということになったけど、見返すと全員ぎこちない笑い顔で、ピースのひとつもない。飲み会の席などで互いの痴態は喜んで撮るくせに、いざ記念写真を残そうとすると全然うまくいかない。この日撮ったのは結局4枚くらいだったと思う。

祖母の仕送りが相変わらずものすごい量で、一人じゃ到底食べ切れない。インスタントの皿うどんは具だくさんで結構おいしいけど、かといって立て続けに毎日食べたいものでもない。誰かにあげようかと思った時に、かれらの顔を思い出した。きっと気軽に「要る」とか「要らない」とか返事が返ってくるだろうと知りながら、何となく連絡することができない。

天橋立のはしっこに、私は多分一番乗りして、振り返って残りの三人を見た。あの光景を写真に撮っておけばよかったと今になって思う。石を拾ったことについては、あながち間違っていなかったと思う。灰色の底に薄い青が透き通っていて、色んなことを思い出す。近頃は友人のことばかり考えている。