5/15

8時くらいに起きて風呂に入る。洗い髪をろくに乾かさないまま風に吹かれるとぼさぼさになるので本当は夜に入りたいが、入れないので朝に入る。最近夜はぼうっとしてしまうことが多い。ただ昨夜は茶を沸かしていたのでよしとする。水分をとる習慣がなくて冬場などは一日コップ2,3杯で平気で過ごす。あまりよくないのはわかっているので定期的に「水!」と思うようにしている。あとトイレもすぐに忘れるから「トイレ!」も時々思い出すよう努めている。風呂から上がって虫を逃がして、着替えて10時に家を出た。

二軒隣の喫茶店でモーニングのBを頼む。トーストとオムレツとサラダのセット。ここの好きなところは、サラダのドレッシングがマヨネーズベースじゃないところ。あとモーニングがわりに遅くまでやっているところ。昨日図書館で借りた津島佑子を少し読み進めた。多分すごく好きだと思う。店を出てバス停に向かい、バスを待っている間にも読んでいて、緑の多い公園の話の途中で、ふと気が付いて目線をあげたら同じ欅の木がすっくと立っていたので、嬉しかった。

一昨日から美術館のチケットもぎりのバイトを始めた。それほど大きなところではないので来館者は一日100人に満たないくらいで、だから結構暇を持て余す。接客(?)業は初めてで、だからパーテーションの内側に入るのもこれが最初である。壁沿いに設置した長机の、私が座る辺以外の三辺を覆うように仕切りが立っていて、座っていると視界一面透明のカーテンで、景色が少しぼやける。向こう側に明瞭な景色があることが段々確信できなくなって、もしかしたら初めからこんな風に、水彩画みたいになっていたように思われてくる。一緒に働いている方は、50~60代の女性ばかりで、皆さん優しい。まだ上手く話せないが、ゆっくり仲良くなれたらなと思う。

15時過ぎにバイト先を出てバス停に向かい、思い立って家とは逆方向のバスに乗る。週に一度学習支援のボランティアに通っているのだが、ここ3週間ほど休みになっていて、子どもの顔を全然見られていないことが気にかかっていた。いつもの公園をのぞいてみたら、いつも遊んでくれる小学生はいなくて、見馴れた高身長どもが楽しそうにサッカーをしているのが見えた。声をかけるのも気恥しく、また向こうも困るだろうと思ったから公園の前を素通りして、中華を食べて、40分くらい歩いて帰った。最近は移動の際おおむね自転車に乗っているので、イヤホンをつけることができないが、歩きながら音楽やラジオを聞くのはやっぱり楽しい。散歩は楽しくていい。

5/11

去年の今頃の日記をいくつか読み返して、思い出せない、というか思い出す必要も無い過去について記録が残っているのはやっぱり心強いなと思った。ほとんど毎日青果店を見に行って、作ったことのない料理を作っては失敗して、インターネットの恩恵を存分に受けて、後は大体落ち込んでいた。ちょっと高揚気味なのがわかりすぎるほどわかって苦笑する。

音楽に偏る時期と散文に偏る時期がある、というのはやっぱりその通りで、今は断然散文に偏っている。何か聞く時も、最近はオールナイトニッポンをradicoで流していることが多い。色々理由を見付けようとすればできないこともないけど、最近ハマってる、で片付く気もする。ラジオを聞き始めたのは完全にバイトの同僚の影響である。北山あたりでカレーを食べながら「佐久間さんのが面白いのでぜひ聞いてみてください」「聞いてみます」と喋った。彼女はもう社会人で、大阪配属になったらしい。今すぐにでも会いに行ける距離なのに、ニュースや何やで見かける医療のひっ迫状態を考えるといけなくて、もどかしい。

あと、最近本を読むのが楽しい。読む本を義務感で選ばなくなったからだし、長い時間脳みそを覆っていた薄紙が剥がれおちて、ものを考えることがあまり苦でなくなったから。今自分が立っている場所と過去の記憶だけじゃなくて、もう少し先のこととか、自分の部屋が街の中のどの辺にあるかとかを考えられるようになった。集中力は相変わらずごみくずだけど、家で小説以外の本を読めるようになったのはかなり嬉しい。去年は先行研究を読むのが苦痛で仕方なかったけど、先行研究を単なる材料とか、あるいは仮想敵と見做すのをやめて、誰かが書いた文章であることを思い出したので、少なくとも去年よりは読める。気がする。

それもこれも、今のような生活に慣れたこと、授業もバイトもほとんどなくて時間に余裕があることなどが影響していて、自力で解決したわけではない。また忙しくなってきたら、脳みそがくしゃくしゃに縮んで、ジャムしか作れなくなるかもしれないのが少し怖い。だから余計に今のうちに、色々考えておかなくちゃと思う。

昨日は一限の卒論演習に出て、授業終わりにわざとらしく教室に残ってみたけど、先生から話しかけてもらう画策はついえて、とぼとぼ退出した。タリーズでブラックコーヒーのトールを頼んだら、量が多くてしばらく気持ち悪かった。気持ち悪さをこらえながら「ノマドランド」を見て、中型車の免許をとろうかなと思った。バスに乗って学校に戻る途中、路駐したタクシーの脇で運転手が地面に座り込んで、隣に立っているおばあさんと談笑しているのを見かけた。学校に戻って自転車を拾い、帰っている途中で後輩に会った。後輩と喋っていたら同級生も通りかかって、三人でしばらく立ち話をした。中途半端に別れたので、家に帰ってその人にLINEした。数時間後に返事が来た。昨晩中に返したけど、それに対する返事が一日経っても来なくて、少し落ち着かない。こういうのは久しぶりだと思う。時間は円環状に繰り返すけど、毎日ひとつだけ逸脱して、螺旋になる。

 

5/9

人参をピーラーでひらひらにして、塩だけ加えて炒めたやつとパスタを和えたやつが好き。この2週間で5回くらい食べた。今日はオンライン研究会があって、4時間ウンウン唸って疲れた。重鎮みたいなおじさんが怖くて、ほとんど発言できずだめだった。明日は1年ぶりに1限に出る。

5/5

卒論の進捗は芳しくない、演習の発表準備も思うように進まない、そういう去年の6月はじめに私立恵比寿中学と出会ったのだった。自分の不出来と不真面目さを必要以上に気に病んで動けなくなった日は、布団の中でエビ中の動画を見漁った。初めに見たのは無料公開されていた2019年のMUSiCフェスのLIVE映像で、それから幾日も経たないうちにEVERYTHING POINTも公開分は全部見た。一番好きなのは2016年のぶん。舞台袖にいるりななんとやっさんが小突き合うところが愛おしくてたまらず繰り返し再生した。一番沢山見たのは2017年~2018年のぶん。今の6人体制になるまでに、多分メンバー全員に思うところはあったはずで、涙も怒りも沢山映っているけれど、それなのにいざカメラの前に立つとあくまで呑気で朗らかなエビ中なのだった。そのエビ中に明日新しいメンバーが加入するらしい。

ファンになってまだ1年も経っていないけれど、YouTubeにあがっている動画、ファンクラブサイトに限っては隅々まで見つくしたから、時間の感覚が歪んでしまい、結成してからの12年全部見て来たみたいな気持ちになっている。2014年以来だから、7年ぶりの新メンバー加入、感慨深くて涙が出る。6人の彼女たちに出会えて本当によかったし、新しい局面を迎える彼女たちを見守ることができたのもよかった。新メンバーオーディションに参加したのは13歳から18歳の女の子たちで、まだ年端もいかない子どもに対して匿名という安全地帯から配慮に欠けるコメントを浴びせかけたニコ生視聴者をおれは一生許さない。ああした形でオーディション合宿を公開したことを、私は手放しで賞賛する事ができないが、しかし、たった数日であってもメンバー候補の成長過程を記録公開することが、今までの彼女らの生活とエアイドルとしての生活の架け橋となることも確かに想像できて、実際どこから来たかもわからない子を「新メンバーです!」と紹介されても、納得できずに暫く受け入れられなかっただろうと思う。9人それぞれが歌って踊って喋っているところを見ているうちに、当然ながら愛着が湧いてしまい、まんまと向こうの策略に引っかかった。こうなると誰かが落ちるのがつらいのだが。

今のエビ中に去年何度も救われて、大好きになったから、変わっていく姿を見るのは少し怖い。だけど好きになった彼女たちが「エビ中」を名乗る限り、エビ中を推し続ける。よし。不安で食べたもの全部戻しそうだったが、書いたら少し落ち着いた。

5/2(二次創作・習作)

何してんの? 爪、青い方が不健康かなって。ネイルはまた違くない? そうか。そうかも。でもかわいいよね。うん、かわいい。リップもそういうの使ってみたら。黒とか青とか案外似合うかも。あーまた薬局で見てみる。ちふれ? ん。早く金持ちになりてえなあ! そうかなあ。おれぁずっとちふれでいいですよ。麦茶いる? うん。

明日何時からだっけ。えーーーと8時半! ご飯炊いとこうか。いい、コンビニでなんか買うから。そう。お腹にたまるのがいいよ、あとちょっと油っぽいやつ。その方が声出るから。わかってる。Lチキ! ありがとう。

もうちょっといてよー。こっちも明日早いんすよ。バイト? そう。何時から? 9時……だけど、色々準備があるんだから。おまえみたいに起きたままの格好ってわけにはいかないの。じゃあ最後一回だけ読んで。なにそれ。んー、懇願するクジラ。筋違えるからやめときなよ。あーまだ爪乾いてなかった……。一回だけね。あーいらない。立ったままやるから。帰る気満々じゃん。だから明日早いんだって。わたしもだけど。「主文!」 そこからやる? オーケーオーケー。

 

行けるんじゃない明日? 明日は行けると思う。おっ強気。でもなんかそういうの、わかるじゃん。わかるんだ。うん。受かったら地上波デビューだねえ。ラストシーンのさ、犯人が泣き崩れて、断崖絶壁をバックにこうさ、お前の名前が流れて来るわけよ。ざぱーん!ずらずらずら……。舞台ホームセンターじゃなかった? そうだっけ。じゃあ崖はないかー。感傷もへったくれもねえな、角材とバケツじゃな……。もっと色々あるでしょうよ。にしてもいつもとそう変わんないじゃん。いつもと変わんないんだって。テレビだぞ。芝居だよ。

食器そのままにしとくから。いいよー。どうせわたしが洗うんだよ。そうかもしれない。じゃあおやすみ。明日お前のこと連れて行く、頭の中。ご勝手に。おやすみ。おやすみ。

 

5/1

卵以外のたんぱく質をことごとく切らしており、どうしても肉が食べたいから外食することにした。店で食べるとどうしてもお金がかかる。けちくさくて出不精なので「今から買ってきてつくるのが面倒だから」以外の動機がないと一人で外に出られず、それで自然とカレーばかり食べにいくことになる。近所のカレー屋を制覇するという目標にかこつけて、何とかかんとか家を出る。

人が多ければ次の機会にと思ったがそうでもなかった。初めて行った店なので何を頼めばいいやら、辛さの加減もわからないから、比較的辛くなさそうだったココナツベースのチキンカレーを頼む。これがわりかし辛かった。他の客はみんな二人連れで、控えめに談笑しながらゆったりした様子でカレーを口に運んでいる。私はごぼごぼと溺れるように水を飲みつつ食べ進め、ものの10分で平らげてしまった。らっきょうと玉ねぎのピクルスが美味しかった(クミンシードがかかっているのもよかった)のと、居心地のいい雰囲気だったのとで、多分また行くと思う。「本当においしいチャイ」というのがおいしそうだった。

帰りにスーパーで肉を買う。鶏もも肉が安かった。何となく酒が飲みたくて、チューハイが並ぶ陳列棚の前を暫くウロウロしたけれども、どうにも気持ちが高まらない。炭酸が飲みたくないのである。量だって500mlもいらない、コップでちろちろ舐めたいくらいの気分に、優しく寄り添う酒がない。仕方ないから酒瓶を見に行くが、ちょっと飲みたいだけなのに何故重たい買い物をしなくてはならんかと腹立たしい。初めはトンビの眼光で果実酒コーナーを吟味していたが、5分くらいで疲れてしまって適当に安い梅酒を買った。舐めながらこれを書いている。普通においしい。

ゴールデンウィーク初日がこうやってだらりと終わっていく。本当は今日友人が来るはずだったが、飛行機を乗り逃してスケジュールが押したらしく、また次の機会にということになった。出来るだけ家の中で過ごそうという連休でもあるから、無理してでも会おうとは思わなかった。もちろん会って話したいことは沢山あるけど、オンライン上での会合にも慣れて、「会うからにはどうしても直接顔を見なきゃ」という強迫観念は薄れて来たように思う。色々なこだわりが薄れつつあるが、私そのものが薄れているわけではない。薄まるならメチャクチャ薄まってみてもいいような気がするんだけれど。先週受けた授業の中で先生が『植物は〈知性〉をもっている』という本を勧めておられて、それはまだ読んでいないけど、紹介された一節に「人間は、生物学的に人間であるからといって、社会的にも当たり前に人間だというわけにはいかない」というのがあり、心にストンと落ちた。光合成とか呼吸とか、おかれたその場所で生命活動をしている植物は、誰かに認められるまでもなく植物だけれど、私が道の真中に裸で立ち尽くして静かに息をしていたなら、通報を受けた警察が来て取り調べされて、あるいは専門機関でしかるべきカウンセリングを受けるだろう。「ああ人間だ」と思ってやり過ごしてはもらえない。私だって裸の人間が市中をさまよっているのは怖くて嫌だ。ヒトであることは確かなのに、それだけじゃ人間になれなくて面倒くさい。「コタキ兄弟と四苦八苦」にも植物になりたい女の子が出て来て、兄弟も危うくその子と一緒に植物になるところだった。あのドラマでは確か、風呂が彼女を食い止めたんだった。久々の風呂に入ったあと、生まれ変わったみたいにハキハキと話し始めて、彼女は人間にとどまった。確かに、湯船に浸かれるんだったら人間でいてもいいなと思う。

去年までは色んな人の「こうじゃなくちゃ」を内面化しすぎてぐちゃぐちゃになっていたが、この数か月間眠り通していたら大分頭がぐにゃぐにゃになってきて、具合がいい。多分今なら虫とかを躊躇なく食べる。負荷が無さ過ぎてどんどんばかになっている気もしないでもない。インプットに偏り過ぎている。

今日の昼間もダムタイプの「S/N」が映像配信されているのを見た。見た後でこれはちゃんと書き残さなくちゃと思いながら、布団に入って昼寝した。ブブの垂れ下がったアイラインを思い描きながら寝た。起きたら腹が減っていたので、冷蔵庫を開けたら卵しかない。

 

 

4/18

一人でいるとうしろめたい気持ちがどんどん湧き上がってきて辛い。何に対してうしろめたいのかはわからないが、とにかく許されたいと思っている。腹の中に大きな気泡があって、普段は気にならないけれど、ちょっと調子を崩したときに膨らんで他の内臓を圧迫するので、息が苦しくなる。たくさんの小さな泡粒にして、背骨に沿うようにのぼらせて、少しずつ首の後ろから放出するイメージをしてみるけど、あまりうまくいかなかった。昨日も大体同じような感じで、どうにか19時に家を出て映画を見に行けたから、今日は一寸はマシかと思いきや、だめっぽい。気泡が胸のあたりにあがってきた感じがする。今日という日をどう取り扱うべきか、わかりかねているうちに時間が経つ。事前に計画を立てるべきなんだろうと思う。近頃思考が消費一辺倒だったのも良くなかったと思う。欲しいものが沢山あってきりがない。欲しいものを得るためには大抵、お金を使わなくてはならないので辛い。生産の方に傾けていきたいが、生産とは辛いもので、辛くないなら生産ではないと思っている節があり、一方に絶対辛い思いをしたくない自分もいて、板挟みになってベッドに横たわるほか術がない。レトリックは心の余裕と経済的余裕を反映するので、レトリックだらけの文章を読むと腹が立ってしかたない。自分は通常、かなりレトリックを多用する。汚い。