大学時代の友人とおよそ二年半ぶりに会う。学部が同じで興味が近く、各々勝手に登録した講義が毎度三つか四つは被り、自然と隣同士で座った。私の卒業が一年遅れ、最後に会ったのは友人が地元に帰る前の日だったか、余ったトイレットペーパーと魚の缶詰を受け取った。こうしてわざわざ遊ぶのは初めてで、待ち合わせ場所に着き、待っている時間も何となく面映く、ベンチに斜めに腰掛けて目を瞑った。時間ちょうどに友人は来た。
大学近くでご飯を食べようということになり、何が食べたいか聞いてみると「イタリアンとかそういう、海外の特殊なのはちょっと」と言うのでウーンと悩む。ハンバーグとも迷ったが、結局本人の希望もあり、うどん屋で丼ものを食べた。こうしてお店で向かい合ってご飯を食べたのも、今までに一回あったくらいだと気がつく。近況報告など。
退店、伏見稲荷大社へ向かう。私はICカードで、友人は切符を買って改札を入った。準急に乗ったが三条で5分くらい止まったままなので怖かった。特急に乗って乗り換えた方が早かったかも、と謝ると、いいよ、ゆっくり話そうと言われる。目の前のベビーカーに座っている赤ん坊が、何回も泣きそうな顔をして、その度こちらを見て真顔に戻るのでおかしかった。
電車を降りてからずっと人が多い。修学旅行で来て以来初めてだったから、こんなに観光地めいていたっけと思う。きっと境内目の前のJR稲荷駅で乗り降りして、周りをぶらぶら歩く時間がなかったんだと思う。本殿で手を合わせた後、地図看板を確認し、行けるところまで行こうと歩き出す。なんか、ものすごく歩いて、目標にしていた「三の辻」だと思っていた場所に着き、看板を見ると二つくらい前のエリアなので、見晴らしのいい景色を背にして崩れ落ちるようだった。友達が図書館で借りてきたガイドブックには「大人のプレミアム旅」と書いてあったので、これが本当にプレミアム旅か!?といちゃもんをつけた。青いウィンドブレーカーのおじさんが「この看板に描いてることをそのまま信じちゃいけない、あと15分で頂上だから」と謎のアドバイスをしてくれて、そんなら行くかとまた歩き出す。途中の茶屋で買ったペットボトルのお茶が250円もした。今日は最近で一番暖かい日で、コートもいらないくらいだったが、山に入っていくにつれ気温が低くなり、かと言って着て歩くと暑くて汗をかき、それならと脱げば汗が冷えて寒くなり、着たり脱いだり忙しかった。
ひたすら鳥居をくぐりながら、仕事の話や、大学時代のことや、何やかや話す。歩きながらのことだからそんなに頭が回らない。久々で、もっと話すべきことがたくさんあるようにも思えたが、こうしてなぜか一緒に山登りして、途中で出会った猫をあやしたり、落ちてくる枝にびっくりしたり、それ以上に大事なことなどない気もした。あと少しで頂上に着きそうな勾配のきつい階段で、上から人が降りてきて、私たちの後ろから登ってくる知り合いに「ぜんぜん頂上って感じしない!がっかり」と大きな声で言っていた。そ、そんなー!といいながら駆け上がる。一時間かけて目指した山頂は、全然頂上って感じしなかった。
下山、参道の茶屋で休憩。私は餅の入った甘酒を飲み、友人はきなこオレを頼んだ。甘酒飲んだら、帰りに最寄り駅から家まで運転できなくなるから、との理由。甘酒はアルコールほぼ入ってないよと言ったが、なんか不安だからやめておく、ということだった。
駅に移動し、土産を買い、てっきり夕飯を食べるつもりでレストラン街に向かったが、きなこオレでお腹いっぱいだからと断られ、その辺のベンチに座ってだらだら喋った。そういえば二年半前に最後に会った日にも、どこかでお茶をと誘ったけど、今日はやめとこうと断られたのだったか。彼女が京都に来たことではじめて、ああ本当に、大きな脅威が過ぎ去りつつあるのだ、と思えた。三年もかかったのか、とも。
当初に乗るつもりだった電車より30分早い便で帰っていった。聞けば家族旅行以外で遠出するのは初めてだったらしく、となれば私は初めて一緒に旅行した友達で、何となく誇らしい。すぐにとはいかないかもしれないけど、また会える気がする。