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名前というのは約束なので、あれば確かに安心だけど、ない方がずっと楽、という場合も往々にしてある。「彼女らあんなに仲がいいのに、どうして」なんて言われたって気にも留めない。「親友なんだね」とか「付き合ってるの?」とか、聞こえないふりしてていい。不安になる必要もない。行きついた先にぴったりの名前が見つかったら、そこで初めて自ら名乗ればいい。押し付けられることなんかない。それまでは身軽なワンピースで、曖昧さは春の光に都合よく飛ばして、目いっぱい一緒に遊んでていい。と思う。思った。私の好きな先輩の話だ。

ハイエースの後部座席でファミマのおにぎりを食べながら、彼女らを眩しく眺めていて、ああ、皆が幸福な春だったらいいのにな、と願う。あわよくば私も!

おにぎりと一緒に買ったチョココロネのクリーム、柔らかすぎて食べてるそばからあふれてしまう、かなわないなあ、かなわない。