12/13②

昨日は電話が切れたあとそのまま眠りこけてしまって、床の冷たさで目が覚めた。慌てて支度してバイトに行った。キリが悪かったのと、要領が悪かったのとで30分残業した。

バスを使ったので、ぎりぎり三限に間に合う時間に学校に戻れたのだけど、何だか泣きそうになってしまって、這う這うの体で生協ショップに向かい、おにぎりとクレープデザートを買って、外のベンチでもそもそ食べた。バスに乗っているときから「このまま乗り過ごしてしまおうかな」などと考えていて、苺のソースがおいしいクレープを食べてもなお、「ああ乗り過ごしてしまいたいな」という気持ちでいっぱいいっぱいになっていた。隣のベンチに座った同い年くらいの男の子はPCを弄んでいる。後ろの方では男性がぼうっとした顔つきでお昼ご飯を食べている。知っている顔はどこにもない。ああだめだ、こりゃだめだ、と思い詰めたところで、隣のベンチから高らかに「花咲けぱっかん!」と聞こえて来た。かの有名な河童の子の、かの有名な歌である。どうやらPCの青年はアニメを見ていて、音が外に漏れていることに気づいていないらしかった。そこいらじゅうに響き渡るかなりの音量で、「開花!」とやっている。景気がいい。

青年が音漏れに気づいたのと同じタイミングでクレープを食べ終わったので、私は元気に立ち上がり、ぶんぶん腕を振って教室まで歩いた。もしもご縁があったなら、いつか彼には「ありがとう。おかげで助かりました」と記したカードを添えて、はなかっぱグッズを贈りたい。

文庫・新書のセールをやっていたので川上弘美の『センセイの鞄』と小川洋子の『シュガータイム』、あと百閒の『御馳走帖』を買った。ちょうど図書カードが切れていたけど、何分景気が良くなっていたから、どうせなら自分のお金で、と思って、買った。上の階の食堂で『センセイ~』を読みながら夕飯を済ませた。読んだことあったけな、と思ったけれど、ワライタケの話の抜粋が国語の問題に出題されたのでそう思っただけで、通読したことはなかった。図書館で何度も借りようとして、あきらめたのだ。気恥しくて。

今まで読んだことがなかったの、人生の損失だった。かなりいい。ちょっとセンセイ、節操ないな、と思うけど。そこもまたいい。やはり女の人の一人語りという形式がとても好きだ。生活についての、情緒の動きについての気づきを教えてくれると、たとえ気が合わなかったとしても、その人のことをすごく好きだと思う。それに、江國香織川上弘美は、すごく気になる存在なのに、仲良くなるのにかなり時間がかかる女の先輩(あるいは先生)みたいな、そういう雰囲気がある。こっちが勝手に小説を読む分には自由だから、生身じゃなくてありがたい。