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出町座でケリー・ライカートという監督の特集をやっている。一昨日は「Old Joy」を観て、さっき「River of Grass」を観てきた。あと二作品も観に行くと思う。

映画が好きな友人がいて、時々おすすめのタイトルが送られてくる。大学2年生になるまで映画を観に行く習慣がまるでなかったので、観る映画の選び方もまだわかったとは言いきれず、それで勧められたら大体観に行くようにしている。「花様年華」「わたしはロランス」「燃ゆる女の肖像」「満月の夜」など。いずれも大変面白く観た。映像がきれいで、突然の大きな音や爆発や暴力で驚かしてこないのを選んでくれている気がする。ケリー・ライカートはその人に勧められたわけではないけど、出町座が参加する特集だったら、と大体同じような動機で、よくわからないけど観に行った。「Old Joy」に出て来るカートの濡れた巻き髪が印象に残って、あと聡明な犬のルーシーが夢中で棒を追掛けるさまをもう一度みられるかと思って、「River of Grass」も観た。今度のにはルーシーは出てこなかったし、何なら犬は殺された。その代わりコージーに会った。これから何度も思い出す。ぱさついた赤い髪。

空も海も草っぱらも、開けてずっと遠くまで見渡せるのに、真ん中にコージーやリーがいるとすごく息の詰まる景色に見える。晴天つづきですごく喉が渇くから、太陽を避けて、電気の消えた風呂場でバスタブに浮かんだり、夜のプールに躊躇なく飛び込む。憂鬱な水色のサマーセーター。くすんだ青色の車。行為は意志の産物? そんなわけない。コージーには今しかないから、過去や未来に選ばされない。最後のシーン、あの人には目の前の道しか見えていないと思う。目の前の道すら見ているか怪しい。本当に、二人の子どもも、夫も、父親も、リーすらも、忘れてしまっていると思う。

コージーの印象がつよいけど、結構笑いどころが多くて、それも気に入った(台所シンクで洗浄されるモルモット……)。警察官の爺さん連中、渋すぎてマジで鼻血が出るかと思った。