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電車の中や図書館で、席をみつけて座ると大抵、近くに座っていた人が時間を置かずに去っていく。そういうことが多い気がする。今日も学校の図書館で、窓際の席を見つけて座ると、三つ隣の席の人がそそくさと違う席に移動していった。気がする。私が席についてすぐ携帯を取り出して、しばらくいじっていたのが良くなかったのかもしれない。「こんなだらしのないやつが近くにいたんじゃ出るやる気も出やしねえ」と思われたのかもしれない。もしくは今の私を取りまく気の悪さみたいなものが見えるタイプの人だったのかもしれない。黒紫色の竜巻が目の端に入って気が散るので、場所を移したのかもしれない。あるいは実際私がくさかったり、見た目が嫌だったりしたのかもしれない。いくら考えてもどうしようもないことだが考えずにはいられない。小さい頃に優しい医者が私の目に手術を施してせめて自分で自分の姿を見る時くらいほどほどに普通に見えるようにしてくれたのかもしれない。気のいい呪術師が洗脳をかけてくれたのかもしれない。だから普段鏡を見る時は気づかないでいられるけど、他の人にはとんでもない化け物に見えているのかもしれない。いずれにせよ大きなお世話をしてくれたものだと思う。知り合いはみんな優しいし見た目をどうこういってくる人じゃないから気にせず近くにいてくれるのかもしれない。しかし自分は洗脳にかけられているのでその人たちの優しさにも気づけていない。呆れた事だ。涙が出る。先ほど試しに自分が喋ったり歌ったりしている姿をスマホで撮って見返してみたが何だかものすごく変だった。どのあたりがと聞かれれば、例えば瞬きの多さだったり黒目だけ右に流す癖だったり口の動かし方だったり、とにかく色々変だった。思っているより太っているとも思った。自分である程度想像していたのと違っているのが嫌だった。この三日くらいとにかく色んなことが、しょうもないことが気にかかって、落ち込むことが多い。生活リズムが崩れているとか勉強がはかどっていないとか生理二日目とか昨日まで副反応が残っていたとか色んな外的要因が考えられるが渦中にある時そんな分析は何の慰めにもならない。とまでは言わないが、わかっていても落ち込むものは落ち込む。ほんの5パーセントくらい落ち込むのを楽しんでいるようにも思われる。宇佐見りんの「かか」のなかに、おかしくなってしまったかどうかは電車に乗ればわかる、その人の周りだけ誰も座らないから、という一節があった気がする(結構違うかもしれない)。私もずっとおかしいのかもしれない。それならそうでずっと同じ場所に居座り続けてやる。尻から順に溶けて行って、最後に目玉二つだけ残る。死にたくなったことはこれまで一度たりともない。最高。最高で最低で最高です。夕飯はミリオンのインディアンハンバーグ。古い空調が終始大声で歌い続けて店の中まで雨降ってるのかと思った。