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少し微熱があるせいか気分が落ち込む。明日のバイトは多分休むと思う。今日は昼から演習があったけど、私は何も発言できなかった。自己嫌悪から逃れたくてyoutubeを見続ける。

今日は「大豆田とわ子と三人の元夫」の9話があった。来週で終わってしまうのが寂しい。続編は一作目にかなわないらしいから、別の場所ではもう会えないと思う。「カルテット」ですずめちゃんが別府さんとデートに行く夢をみる場面があって、それがすごく好きなんだけど、今回のとわ子と八作にしてもそう、ありえた幸福を想像することは別に不幸なことでも空しくもないと思う。目前の現実は、今ここにいる私にとって唯一の現実で、これからをよくしようと努めることはできても、今ここだけは何というか、天気みたいな現象で、悔やんでみても嘆いてみても、降るときは暫く降っているし、吹く時は暫く吹いている。だから泣き言なんか無駄、とかではなく。それはそれとして、雨は降るし、風も吹く。

今ここにいる私は目前の現実を生きるわけだけど、広い世界にそれしか存在しないと思うのは寂しいことだ。別の場所とか時間には別の私がいて、別の現実を生きていてほしい。できればなるべく気候のいいところで。そいつは今頃、どんな風に生きているかなと想像する。幸福であればあるほどよくて、そのことは私を不幸にはしない。ただ少し、私と彼女とは決して会えないから、そのせいで少し、胸が痛む。

とわ子と八作も、鹿太郎も、慎森も、別の世界では今もまだ夫婦だったり、はたまた出会っていなかったりするだろう。今ここではそういうわけにもいかないけど、それでもやっぱり、一緒に生きている。

「大豆田とわ子と三人の元夫」の時間は円環的で、小さなわっかと大きなわっかで構成されている。たとえばさっきの9話では、冒頭夢に見た薬指の指輪が、最後にコガネムシになってあらわれた。これは小さなわっか。もう少し大きなわっかを探すなら、1話で外れた網戸は8話の小鳥遊がもとに戻したし、ぼろぼろのとわ子を迎え入れた八作は、今度はとわ子に招き入れられる。もっと上から見るのなら、一度距離を置いた夫たちと再び近しくなるのもわっかかもしれない。ただここで、円のはじめと終わりは消して出会わない。上から見れば円形だけど、横から見ると螺旋だったことを知る。同じようでいて、全然違う場面に何度も何度も出会いなおす。それぞれに出会う私もまた、似ているようで違うだろう。別の私やあなただから、違うシーンを演じられるのかもしれない。と思う。それってすごい希望だと思うのだ。あの時間違えたことはどうしようもないけど、また別のシーンで演じなおせるかもしれないから。(蛇足。とわ子は複数人の男たちからひっぱりだこ(無粋この上ないまとめ方だが)なわけで、その割にあんまり乗り気じゃなくて、かと思えば二人きりになるとちょっと優しくなったりして、こんな女の人を嫌味なく演じられるのなんて松たか子以外にいないよ。絶対いない。)

ドラマを見ながらずっと考えてきたことを書きだしてみたけど案外しょうもなかった。まあでも、仕方ない。知恵熱が出て来た感じがする。歯を磨いて寝る。