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問われたその場で自分の位置を捉えて正しく表明しないといけないから、すごく不利だと感じてしまう。そらでものを考えることも、考えたことを覚えているのも苦手で、だから書いてなきゃいけないはずなのに結局サボってしまう。自分ひとりの小さな生活を守ることは随分うまくなったけれど、そこから飛び出て誰かと話をしようとすると、伝えるべきことが何もなくて途方に暮れる。何もないはずはないだろ、取り敢えず入り口辺りに落ちてる言葉をひっつかんで渡して、それを「私」ということにする。それしかできなくなっている。軽口をたたいて来たツケが回ってきたんだろうし、だけどどこか他人事みたいに、喋っている間ずっと、不利だな、と考える。

不利とか有利とか、そもそも相手とのコミュニケーションを将棋か何かだと思っている。いつ誰とでも、というわけではない。話しているうちに、段段勝負のようになってくる時がある。次の一手で必ず刺す、今受けた攻撃はきれいに急所に入ったけど、大丈夫、まだ勝ち筋は残っている。こういうゲームはたまになら楽しいけど、相手から高い評価を得たい、一目置かれたい、みたいな思惑がある時は、選ぶ言葉も間違えがちで、ただただつらい。結局負けるし。負けるって何だよ。一緒につくるものでしょう、会話って。

勝負みたいな会話しかできない相手がいる。向こうは多分そんなつもりないんだろうけど、私はいつも「挑まれた」と思って身構える。銃を取ろうとして、目線は外さず、背後の武器庫を手探りする。ねばついた油が指につく。全然手入れが出来ていないのだ。使えそうなのはプラスチック製の空気銃だけで、仕方がないから威嚇射撃。ポスンと気の抜けた音がする。相手が少し悲しそうな顔をする。「こいつは敵じゃなかった」という顔で、労いにかわいらしいピンポン玉を投げてよこす。こっちで遊ぼうということなんだろう。私はそれをはたいて地面で割る。また悲しそうな顔をする。期待した自分が悪かったみたいな顔。それなら初めから挑まないでほしい。ひとりでいるのはつくづく楽だと思う。

昨晩、急に呼び出されて3人で山に登った。深く満足して家に帰ろうとしたら、別れ際、脇腹を深く刺された。刺されたなどというのはこちら側の印象、妄想に過ぎず、要は痛いところをつかれたのだ。ぐうの音も出ない。夜が明けた今も妄想上の血が流れ続けていて、ベッドから動けない。単なる寝不足、筋肉痛というのもある。