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忘れていた。本が作りたいのだった。昨日友人と初めてホホホ座を訪れて、店頭に並ぶ本のすみっこに、控えめで華奢な上製本が数冊積み重なっているのを見つけた。手に取ると「わすれたものたちの本」という題と知らない女の子の名前。成人式に行く代わりに本を作ったんだって。彼女にとっての大事な人たち(なのだろう)の写真と、大事なことばたち(なのだろう)と、夜の水辺の夢とが挟まっていた。やられたなーと思った。私だってこれがやりたかったんだよと思った。これがやりたかったんだけど、その時点でもう、これと同じことはやれないなーとも思って、あああと地団駄踏んでハンカチ噛み締めて、嘘だけど、でも本当に、あああと思った。「大人になったら楽になれますか」って聞いたんだって。大人になった自覚はないけど、大人になったら、とはもう、だれにも、聞けないような気がする。