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クリスマス!クリスマスである。何は無くても心が浮きたって、ついつい目覚ましがなる前に起き上がって、何か楽しいことはないかしらとカーテンの隙間から窓の外を覗いてみたりして、そしたらなんと何と、黄色い光でいっぱいの、いい天気だ。クリスマスなのである。

昨日は朝からバイトに行って、お昼ご飯は先輩と食べた。イブですねえ、そうですねえ、だとしたらこりゃあイブランチですねえ、などとだらだらおしゃべりしながら、チキンカレーを食べた。

夜はまあ、もちろんのこと特に予定もなかったので、思い切って四条河原町に買い物に出た。二か月くらい欲しい欲しいと言い続けて来た新しいコートを、クリスマスにかこつけて買っちゃおうという魂胆で。前からチェックしていたお店で真面目な顔して歩き回っていると、40代くらいの、髪の短い、やわらかい雰囲気の店員さんに声を掛けられて、二着ほど試着した。「こっちがとってもにあうわねえ」と言われて真に受けた私は、フロアを一周歩いて考えた後で、おろしてきたお金のほとんどを費やして、購入してしまったのだった。襟の大きい、Aラインの軽いコート。高校時代着ていた指定コートにちょっと似ている。

ほくほくした気持ちで外に出た。三条方面に向かうために横断歩道を渡っていたら、私と同じ年かちょっと年下か、3人くらいの男の子たちがあたりかまわず高らかに、「ええじゃないかええじゃないか」と叫んでいて、びっくりした。混雑する交差点、すり抜けていくひとびとの大半は、すっぱいものを間違って口に入れたみたいな顔つきで、あるいは「なにあれ、どういう意味?」と分かりやすく困惑している人もいた。私はいったい全体、その呪文を知っていたわけで、彼らに混ざって道行く人の肩を揺さぶりながら「ええじゃないか」を強要し、クリスマスイブ・ええじゃないか騒動の再現に貢献できたやもしれないが、何分恥ずかしさが勝った。

「ええじゃないか!」一回だけ、小声で叫ぶ。勿論誰も呼応しない。私は至極満足した。

その後も無印良品やら丸善やらを物色して、大いに散財した。帰宅後は漫画を読んだ。かしのこおりは天才だし、『メタモルフォーゼの縁側』は無上の傑作だ。読みながらそうだ、今日は志村正彦の命日だったか、と気付いて、アラカルトを聞いたらこれがまた、今まで真面目に聞いてこなかったことを恥ずかしく思った。とても安らかな気持ちで、昨日はみんなああいう気持ちで過ごせていたらいいけど、と思う。

ああ、だれか大事な人と過ごした昨晩でもないし、目が覚めたって枕元にプレゼントが置いてある訳でもないけど、にしても今日はクリスマスである。いい夢を見たので寝覚めがいい。体育館でバレーボールをすることになって、私が「あのボールは当たると痛くて、こわい」と言ったら、「ばかだなあ」と笑って、むこうから飛んできたボールを高いサーブで返そうとするんだけれど、ネットにあたって跳ね返ってきて、今度は私が「ばかだなあ」と笑った。今日もいい日になればいいと思う。