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昨晩布団に入った時には夜中の二時をまわっていて、当然早起きなんかできやしなかった。八時過ぎに目が覚めて、「あぶねえあぶねえ」と口の中で呟いて、きっかり23分で支度して家を出た。顔を洗い、鍋に火をかけ、牛乳を煮立たせないよう慎重に温めて、着替えをし、髪に油を塗りこんで、荷物をまとめ、出来上がったミルクティー(シナモンシュガー入り!)を飲んだ。財布を忘れて家を出たけど、ちゃんと十歩以内に気づいた。こんなに首尾よく朝の支度ができたことがこれまでに果たして何回あったろうか。我ながらほれぼれしてしまった。もちろん、バイトの始業時刻にもちゃんと間に合った。

朝のうちにやろうと思っていた課題は、仕方がないから授業を休んでその間に終わらせた。普段使っているペンケースの情報を、準備されたメタデータのカテゴリに従って書き出すもので、いまこの赤いペンケースが私の手元にある経緯とか、色々思いだした。先輩からのもらい物なのだ。今朝丁度バイトのシフトが被って、久しぶりにおしゃべりした。相変わらずのしっかり者で、少し抜けているところがチャーミングな人。今日は耐熱性ではないのに誤ってレンジにかけ、溶けてしまった友人宅の皿を買いなおしにいくのだと言っていた。

3回生になってあれこれ、特に勉強のことを考える時間は増えたとばかり考えていたけれど、実際図書館やなにやらにこもって学問らしき営みに時間を費やすことは多くなったのだが、授業中に感動することはかなり減ったような気がする。そもそも受けている授業が少ないといえばそれまでだが。

発表の準備をする前に、知った顔でも見て気分を変えようと思い、元いたサークルのBOXに向かう。2、3人しかいないだろうと踏んでいたのに、10人近くの後輩が喋ったり作業したりしていて、あまりかまってもらえなかった。寂しい。ここはもう私の場所ではない。でも彼女らにとっても、そうなるときは近くて、そういうことをずっとずっと繰り返してきたのだ、この散らかった、ちっぽけで変てこな部屋は。一番近くて遠い場所、慕わしい部屋。

かまってもらえなかったせいで、寂しくなってカレーを食べた。ココナッツミルクと筋のぎゅっと詰まった牛肉の塊が入ったやつ、初めて食べたがうまかったので、今度来た時も同じのを頼むと思う。ああでも、店員さんは三件隣の姉妹店にいる人の方が好き。流れているビデオも、いつもは楽しく見て居られるのに、今日はなんだか不愉快だった。

おたふくさんみたいな輪郭の男性が埋葬される死体と泣き叫ぶ老女を交互に見るシーンが出てくる。どうやらこの男が死神かなにかなのだろうと思うと、殺された女性の写真を地図に貼り付けて捜査会議を行う警察がでてきて、いやこれは、どうやら連続猟奇殺人がテーマらしいぞと分かる。男性は殺人鬼なのかしら。音楽と場面設定が突然変わり、さっきの男性がプール沿いの椅子に座って、おなじくプールで撮影を行う女性をじろじろとながめている。女性がトイレに入っていくと、後を追ってつかつかとトイレ内に入り込み、鏡の前でいちゃこらしはじめる。その後付き合い始めたと見えて色んなところでこれまたいちゃこら、私はここでギブアップした。そもそも飯を、それもカレーを食っている人間の前でトイレを大写しにしないでほしいし、いつ女性が殺されるかと思うと見て居られたもんじゃなかった。少し腹が立ったので長々と説明してしまった、失敬。

大学に戻り、コピーカードを買おうと思って生協に行ったら、授業おわりにおやつを買いに来ていた学部の友人に出くわした。彼女がたい焼きを食べている間、ずっとつまらない話をくだくだと続けていたのだが、いかにも面白そうに聞いてくれたので嬉しかった。あまり進捗はうまれなかったが、帰ったらもらったお菓子を食べる。