朝から技能教習だった。といってもまだ昼だが。昨日は化粧も電気も落とさずに下着のまま寝てしまって、起きたとき、こんな悪質な睡眠しかとれずに車を運転しないといけないのが、自分にも教官にも悪いような気がした。通行人とか他の車の事とかは考えなかった。今思うと少し申し訳ない。罰が当たって、今日の項目は補習になった。ただ単に左折の時右から来る直進車に気が付かなかったのである。今宮神社の神様もさぞひやひやしたことだろうと思う。
補習が決まったのは二回目で、さすがに落ち込んでしまったから、帰りのバスの中でnever young beachを聞いてマインドコントロールを試みた。窓から見える曇り空があんまり重たくて、とてもじゃないが海沿いの明るい景色を思い浮かべきれなくて、暫くして聞くのをやめた。急停止した時に鞄が倒れて中から財布が転がり落ちた。拾うのも少し億劫であった。
学校についたらすぐにレポートに取り掛かろうと思っていたが、先に飯を済ませて、元気をだそうと思った。こういう落ち込んだ時、私はすごく自分に甘くなる。生協の購買で飲むヨーグルトとライ麦パンを一つ買って、法学部棟の、中庭に開けた渡り廊下みたいなところで食べた。物寂しいから借りていた百閒全集を読んでいて、鷄蘇佛に当たった。途中から涙が止まらない。この人は悲しくてたまらない時、一人泣きながら往来を歩いたり食欲を失ったりする代わりに、友と会って酒を飲んでくだらない話をして、うまい飯を食ってまた酒を飲んで、ほとんど思い出すようなこともせず、時々眉をしかめたりしたんだろう、そういう人なんだろうと思った。そういうこの人がやはり好きだと思った。堀野の響きが古野に似ていて、ばからしいけどそんなことでも泣いた。
今日中に近代文学のレポートを半分、とは言わないから、あらすじくらい書き終えられるといいと思う。明日も朝から技能教習。
